乱暴な曾根に母は強く出ることができず、妹は恐怖に震え、弁護士に相談し、法律が自分たちを守ってくれないことを知った秀一は、曾根を排除するための完全犯罪の計画を練る、という展開
ミステリには「倒叙ミステリ」というジャンルがあります
犯人視点で犯行の様子がまず描かれ、警察なり探偵なりと対決するという構造を持つものをいう
倒叙ミステリの探偵役は犯人のミスを見つけ、追い詰めていくのが定石です
そしてこの『青の炎』も倒叙ミステリです
予想外の出来事やわずかなミスが、秀一の足をすくう
殺された側に同情の余地がない上、家族を思う秀一の事情がつぶさに描かれるため、窮地に追い込まれていく彼の様子はとても切ない
だが心情的な面を取り払ってみれば、「青の炎」の後半はまさに策士策に溺れる様子が描かれる
ハッピーエンドではいけなかったのか、
なぜこんな切ない結末にしたのか、
『青の炎』というタイトルのとおり、青は冷たさの比喩であり、青春の青でもあると思われるが、もうひとつ、未熟という意味もある
青二才とか、まだ青いね、なんていうときの「青」である
原作で過剰なほどに描かれる、完全犯罪への傾倒
もちろんそれは家族を救うためなのだが、その方法が殺人しか思いつかなかったことと、それにマニアックなほどのめりこんだことは即ち、秀一の青さを意味しているように思えてならない
そしてそれは同時に、10代の子どもにここまでやらせてしまう大人の責任を問うていると感じられる
自分にはできる、自分だけでできる、
そう思っている子どもの憐れさが物語から立ちのぼる
とかく、まだアイドルとして駆け出しの頃の二宮さんの名演を観ていると、この13年後に日本アカデミー賞最優秀主演男優賞とるんだよ、と画面の中の二宮さんに教えたくなる作品です