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  • 2024-12-10

    [spam] 小説「鳴り響かないアラームの時」

    秋草です!

    こんにちわんこそばずるずる(真空ジェシカのラジオ「真空ジェシカのラジオ父ちゃん」より抜粋)

    小説書きまーす!

     

     

    小説「鳴り響かないアラームの時」

     

    優しさなんて要らないなんて要らない。

    外の白熱灯のような雪景色は、揺るぎない心を安静に抱き合わせる力がある。

    針の無い時計のような私の心の奥。

    何も決断出来ず、何も進展せず、只々募る苛々が震わす。

    手の衝動に痒みがあり、皮膚をリバーシブルに裏返して表面にシャワーを掛けて濡らしたい。

    このまま遠くまで行きたい。

    何もせず、立ち尽くす事しかせず、遠くの彼方へ。

     

    緑色が好きだ。

    大嫌いな自然界に巣くう木々のざわめきに面くらい、自己嫌悪の魂を嘲笑う緑色が好きだ。

    緑色のカラコンを五時間だけした事がある。

    買ったは良い物の外に付けて出る勇気は無く、家の中で五時間だけ装着し、そしてほんわかと飽きて目の奥を押すように取り外して捨てた。

    ああ、アラームよ、鳴り響け。

    私に時を刻ませ、目を醒ませるアラームよ、鳴り響け。

    こんな事を考えていたら、あっという間に三ヶ月が経った。

    久しぶりに号泣してからの三ヶ月記念日に、残念ながらアラームは鳴りそうも無く、静かに四ヶ月目を待ちそうだ。

     

    そんな時、サンタクロースが窓から見えた。

    ん?と思惑が照らされたかのような光がコンコンと輝き、サンタクロースはかなり家の近くまで来たかと思うと右折し、少し黄ばんだ袋が視界から消えた。

    私は、その黄ばみ具合が好きだな、と真っ先に思った。

    メルヘンの世界の住人も生きている。

    それが、その黄ばみから感じ取れた。

    私は既にメルヘンの世界に半分足を突っ込んでいる。

    それはつまり、自分が生きている感覚がわからなくなり、架空の自分なんじゃないかと、そわそわとしたファンタジーだ。

    だからこそ。

    サンタクロースの存在よりも、黄ばんだ袋から見える生きている存在感の方が、迫り来るように伝わってきた。

     

    私が生きる為に必要な物はなんだろう。

    サンタのように、誰かに愛を届ける事かな。

    それとも、もう間違えないように、自分に愛を届ける事かな。

    いつものように黙っていられなくなり、私はほんの少し笑ってみた。

    ニコッとした顔は自分では見たくなくて、でも、大切な誰かには、見てほしい。

    その誰かがいつ来てもいいように。

    私はもう一度アラームをセットした。

    戻れない未来がやって来るように。

    ひっくり返せない過去がやって来るように。

    私がまたセットしたアラームは、絶対にまた鳴り響く。

    そう確信した日、少しだけ、私の心は進み出した。

    これは、サンタクロースからのプレゼントだ。

    そして、私から私への、プレゼントだ。