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  • 2024-11-02

    短編小説「歩く度に生まれていく」

    今回はオリジナルの短編小説を書きたいと思います。

     

    「歩く度にうまれていく」

    私の歩く音。

    一歩、また一歩と。

    聴いてくれ、そこらの昆虫。

    聴いてくれ、なっげえ樹木。

    足跡にアイデンティティを持つ事にしたのは、自分が生きてきた軌跡を大切にしようとか誇りを保とうとかではなく、単に、散歩が昔から大好きだからだ。

    散歩をしている自分が、一番私な感じがする。

    ジャンケンをしている自分が、一番私がフリー素材になっている気がする。

    サムギョプサルを食べている自分が、一番自分の輪郭から離れてる気がする。

    まあそれはいいとして、お散歩大好き!

    まだ降りた事の無い駅に降りて、風景、お店、住宅、道路の作りを見ながら、私はうようよとお散歩をする。

     

    今日も、阿佐ヶ谷で降りてお散歩。

    なにがあるかなーと、駅前からどんどんと離れていく。

    そこで出逢ったのが、うずくまっている君だった。

     

    君は、私と同い年くらいというのを、うずくまってる姿から、なんとなくわかった。

    この人、自分と近しい仲になるな、初対面で直観的にそう思う相手は、全く得体不明な人か、どんな人か一気に入り込むようにわかる人か、決まってどっちかだ。

    この人は、泣いていない。

    でも、泣きたい。

    泣く為にうずくまっているのに、泣けない。

    そんな気持ちが、ただ姿を見ているだけで、些細な震えを見ているだけで、わかる。

     

    「あの、だいじょぶですか?」

    顔を上げると、案の定同じくらいの歳の男だ。

    目の大きさに、透き通る気持ちの潤いが広がっているよう。

    小さめな鼻と、個性を感じるには思い出を共有していくまでは難しいような、普通な口。

     

    「あ、ごめんなさい・・・」

    男はそれ以上言わず、そこにもどかしい静寂が生まれた。

    「・・・こちらこそごめんなさい」



    「いえ、ごめん!ごめんなさい」

    また、もどかしい静寂。

     

    「何かあったんですか?」

    私は、もういいや聞いちゃえと、質問をする

    「三人の彼女に同時にフられて・・・」

     

    ん?なに?

    思いもよらない言葉、そんな言葉がこの世にあるとは自力では思いつかないような言葉を、はっきりとこの耳で聞いた。

    「三人、ですか・・・」

    「はい。シェアハウスで」

    「え?」

    「シェアハウスの女の人、全員と付き合ってたんです。バレないように。でもいつか来るというかよく半年も持ったというか、バレて一気に全員からフられて」

    こ、こわい・・。

    それが素直な私の感情だ。

     

    「そんな、そんなだったんですね」

    「はい、だから、ごめんなさい」

    「ああ」

    「俺が最低なだけなのに、心配させて、本当にごめんなさい」

    「いえ、それでも落ち込んでいましたから・・」

    「もうシェアハウスに戻れないんです。家を失いました。これからホームレスになります。ホームレスにでもならないと、ダメだと思って」

    「そうなのですね・・」 

    「はい、なのでまた」

     

    男はまた顔を沈めてうずくまりだした。

    しかし、すぐに顔を上に負けて

    「なんか話してたら、少しつっかえが取れました。自己嫌悪の中の一本がするする抜けていったような」

    「それはいい事なんですか?」

    「わかんない、わかんないけど・・。

    俺、もうずっと何も食べてなくて、スマホも何度も机にぶつけられて故障してて、財布も奪われて、だから、なんか、恵んでくれませんか!!!!!」

    私が最初に感じた、近しい仲になる予感が、外れてますように。

    そう思いながら、カバンの中に入れていたカロリーメイトを、その男にあげた。
     

    やばい!めっちゃ長くなった!一回の写メ日記で終わらねえ!

    まさかの連載短編小説にします!しばしよろしくお願いします!

    秋草でした!