写メ投稿
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2025-09-27
絆創膏と掌と、第3の目
子供の頃
僕は漫画を描くのが好きだったテスト用紙の裏でも
ノートの隙間でも
夢中で線を走らせた好きなことは時間を忘れるほど熱中し
興味のないことには一切手を伸ばさない
所謂変人で
良く言えば自由人だった常識という箱からはみ出し
枠に収まらない存在だった――大人になり
会社では抜群の処理速度を買われ
評価は得ていたけれどその感性は
響く者には共鳴し
響かない者には
気に障る存在でしかなかった上司や同僚からの嫌味や理不尽に
言い返さず立ち去るだけの僕の心には
重い鉛が沈んでいた――実は僕には秘密があった
おでこに隠された「第3の目」
それを開けば
知性は何倍にも膨れあがり
空間移動の力すら解き放つけれど興奮状態になり
冷酷な人格へと変貌していく代償を伴った
能力を発動する時には
いつも絆創膏を貼り
他人に気づかれぬように隠したいつからか僕は
自分を守るために
第3の目を少しだけ開き
嫌味を言う上司や同僚を冷徹に論破した完璧なまでのロジックと異様なオーラに
次第に誰も寄せ付けなくなり
そのたびに人間から少しずつ
かけ離れていくのを自覚していた――ある日
ショッピングセンターに向かって
街を歩いていると
帽子を深く被った女性が
すれ違いざまに呟いた「第3の目を使いすぎると
普通の人に戻れなくなるよ」咄嗟に振り返ったが
そこにはもう誰もいなかった不思議な余韻を胸に残しながら
僕は歩き続けたショッピングセンターでの買い物を終え
出口に向かって歩く
前から幸せそうな母娘が歩いてくるのを横目に
建物の外へ出た――その直後
轟音が背後を襲ったあの建物に大型のタンクローリーが衝突し
大爆発が巻き起こったのだ建物は今にも崩れ落ちそうで
逃げ惑う人々の感情が
怒涛のように頭へ流れ込むその瞬間
あの声がまた響いた「その力を使ったら
もう戻れなくなるよ」振り返ると
あの帽子の女性が立っていた「構わない!」
僕は叫んだ女性は静かに帽子を脱いだ
そこには第3の目が光っていた「じゃあ手伝うよ」
僕は第3の目を最大に開いた
雷に打たれたような衝撃が
身体中を駆け抜ける瞬間移動の力が全開で迸り
次々と人々を建物の外へと運び出した光が裂け
空間が捻じれ
燃え盛る炎の向こうから
生命が外へ解き放たれる運び出された人々は
しばらく状況を飲み込めなかったが
やがて助かったことに気づき
安堵の声がそこら中から響き渡った僕はその声を聞きながら
胸をなでおろすふと目に入った自分の掌は
もはや人間のそれではなく
異形の形に変わっていた隣に目をやると
僕と同じように
人間とはかけ離れた姿の女性が立っていた「これでいいんだよ…ね」
彼女は小さく呟いた僕は空を仰いだ
普通には戻れないだろうけれど偽って生きるより
本当の自分で進む方がいい
そう思えた圧倒的な力だけでは滅びる
そこに「人間的な心」が寄り添ってこそ
未来は続いていく夜空に浮かぶ星は
淡く瞬きながら
僕たちの選んだ道を照らしていた


