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写メ投稿

  • 2025-08-28

    深海魚と扉と、ナンバー11

    学校の美術の時間
    僕は粘土で深海魚を作った
    お腹には小さな扉を刻んだ
    「11」という数字を入れた
    1と1が並ぶ姿が門のように見えたからだ

    形はいびつだったけれど
    自分では満足していた
    だが金賞を取ったのは
    細部まで作り込まれた
    A君の恐竜の模型だった

    僕の深海魚は
    他人の評価の海を泳ぐことなく
    机の中で固い粘土に戻っていった

    ──時が過ぎて
    僕は会社員になった
    昇進を決める面接のため
    上司が喜びそうな言葉を並べ
    評価シートに形式通りの答えを書く
    心を押し殺し
    ご機嫌を取るだけの報告会

    だがもう一つの顔を持っていた
    趣味で潜り込むのは
    表現の海を泳ぐ地下のコンテスト
    1対1で向き合い
    ジャッジの手で勝敗が決まる世界だった

    練習は重ねた
    勝てるはずと挑んだ
    泳ぎは悪くなかったはずなのに
    ジャッジの判断は僕の負け
    ここでもまた
    他人の評価の海に沈められた

    「この世界の答えってどこにあるんだよ」
    僕は進む方向に迷子になっていた

    帰り道、夜空を見上げる
    雲の隙間に魚の影が泳いでいた
    よく見ると──
    あのとき作った粘土の深海魚だった

    へたくそな形のまま
    でも自由に泳いでいた
    「これが答えなんじゃないか」
    僕は思わず呟いた

    ──数日後
    再び表現の海に挑戦する
    全国から猛者が集まる中
    僕の番が来た

    今度は相手に合わせるのではなく
    自分の内に深く潜り
    問いかけをそのまま表現に変えた
    あの深海魚のように
    暗い海を自由に泳ぐように

    空間は僕の意識に染まり
    観客の心が揺れていくのを感じた
    気付けば会場は沸き立ち
    僕の存在を見つめていた

    僕は初めて
    他人の評価の海ではなく
    自分の自由の海を泳いでいた

    ──後日
    僕は会社を離れた
    深海へ潜り、表現を通して共鳴を起こすとき
    ナンバー「11」の扉は開かれた

    他人の評価という鎖は断ち切られ
    不器用な形のままでも
    自由の海へ飛び出していける

    夜空を見上げれば
    あの深海魚が泳いでいる
    いびつでも確かな光を宿し
    未来への道を示していた