写メ投稿
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2025-08-24
火山灰と雪と、可能性の蓋
──子供の頃
僕の住む町では珍しく
昼間の空から火山灰が降ってきた暑い日差しの下に舞い落ちる灰は
まるで雪のようで
どこか美しかったその中に一つだけ
キラキラと光る灰があった
手に取ると温かく輝き
すぐに消えてしまったあの頃はどんな出来事も新鮮で
僕は自分がなんでもできると信じていた
だが大人になるにつれて
火山灰が積もるように
僕は可能性に蓋をしていった──大人になった僕は
公園の中にそびえる立派な建物で働いていた
数日後に控えた大型イベントのため
周囲は豪華な電気装飾で飾られただがそれは
偉い人たちの無理な命令で組まれた
かなり無理をして設営された装飾で
電気容量を最大まで使っていた
ちょっとしたことで不具合が起きるのは
目に見えていた
最悪の設営だった朝礼では
マネージャーたちの無意味な演説が延々と続く
「従うことが正義」
そう思い込むほどに
僕の感覚は麻痺していった──そしてイベント前日
大雪が降った
装飾の半分が点灯しなくなる
他の作業員はみんな別案件で出払っていて
現場に残されたのは僕ひとりだった
凍える雪の中
素手で配線を探り続ける「早く直せ、終わるまで帰ってくるな」
トランシーバーから怒号が飛ぶ
体の感覚は薄れ
手は氷のように固まり
やがて高所から足を滑らせた激しい衝撃
足を負傷し
トランシーバーも壊れる
連絡は途絶え
雪の中で息が荒くなる
意識が暗闇に沈んでいく──その時
空から一片の光る雪が落ちてきた
子供の頃に手にした
光る火山灰のようにそれを手に取ると
あの日の記憶が蘇る
「なんでもできる」
そう信じていた自分が
胸の奥で再び目を覚ました次の瞬間
壊れていたトランシーバーが復活し
仲間の声が聞こえてきた
僕は助けを呼び
救助された翌日
修理できなかった装飾の責任は
偉い人と責任者へと降りかかり
僕は静かにその場所を去った──今でも
子供の頃に見た火山灰の出来事をネットで調べても
どこにも記録はない
だが僕の中では確かに残っているあの光のおかげで
僕はいつでも
積もった火山灰を払い
雪の冷たさを超えて
「可能性の蓋を取る」ことができる限界の中で思い出すのは
あの時、手のひらに触れた
小さな光
それがある限り
僕はこれからも
まだ見ぬ未来を
自由に描いていける