写メ投稿
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2025-08-17
サイレンと炎と、禁断の実
サイレンが鳴る
禁断の実を食べた者は
自由を失い
永遠に同じループを繰り返すという──現実での僕は
会社員を辞め、自分にしか出来ないことを探していた
誰でも出来ることを選べば
また組織という渦に飲み込まれる
試行錯誤の中で
唯一無二の形に近づきつつあったある日、取引先の偉い人から
「成功者が集まるコミュニティ」に誘われた
数千人のメンバーがいるという
右を向けと言われれば、右を向く世界
会社と何が違うのか──
そう思った時
どこからともなくサイレンが鳴った気がした帰り道
道端に燃えるように咲いた赤い花
その花びらを一枚
ポケットに忍ばせた──翌日
偉い人からの電話
「参加しなければ、取引は難しい」
禁断の実を差し出されているのだと思った
その瞬間、再びサイレンが響いた
身体の力が抜け
気づけば、あの勉強会の会場へと吸い寄せられていた近代的なビルの会場
椅子に腰を下ろしたその時
耳を裂くような大サイレンが鳴り響く
参加者たちの身体が歪み、溶け、
次々と屍人へと変貌していく「俺も同じなのか」
絶望が胸を覆ったその時
ポケットの中の花びらが眩く光った
右手に取り出すと
炎となって掌に宿る
天へ突き上げると
その炎は宇理炎のように刃へと変わり
無数の火の粒が飛び散り
屍人たちを焼き尽くした背後から、さらに重いサイレン
振り向けば
空を覆う巨大な蠅の化け物
その口から、呪いの音が放たれていた「こいつがサイレンを鳴らしていたのか」
炎が唸りを上げ
刃の形を取り戻す
全身を駆け巡る熱に身を任せ
僕は跳躍し
蠅の怪物を両断した
炎に包まれた悲鳴が夜を裂き
ビル全体が崩れ落ちる瓦礫を飛び越え
夜風を浴びながら外へ出る
残響のように、遠くでまだサイレンが響いていた──思う
サイレンに導かれるままなら
楽な道もあっただろう
でも僕は禁断の実を食べなかった
呪われたループを断ち切った右手には炎がある
宇理炎のように揺らめく光がある
それは「誰かの真似」ではなく
自分にしかできない道を照らす火だ今、僕は
その炎を胸に抱き
まだ見ぬ未来へと歩いている