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東京萬天堂口コミ投稿
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写メ投稿

  • 2025-07-25

    静寂と爆音と、金色の尾が駆けるとき

    ふたつの仕事を
    同時に抱えていたあの頃──

    ひとつは、会社員としての顔
    もうひとつは、会社を辞めるための秘密のプロジェクト

    その日、富士山が見える小さな町へ向かった
    顧客のいる物件は、駅から歩いて1時間もかかる場所にあった

    仲間たちは迷わずタクシーを選んだ
    でも僕は、一人で歩く方を選んだ

    「お前ってさ、協調性ないよな」

    笑いながら放たれたその言葉を
    心のどこかで気にしつつ
    今日もまた、僕は一人だった

    途中、大きな橋のそばに
    狐色の木造の店が現れた

    軒先には
    おかっぱの、狐の目をした少女が立っていた

    奇妙な静けさ
    でも僕は足を止めなかった
    “面白そうな場所だな”と
    心の隅でつぶやきながら

    富士山は空の近くにあって
    静かで、美しかった

    顧客との打ち合わせは、淡々と終わった
    その直後──
    電話が鳴った

    もうひとつの仕事
    僕が命をかけて育てていた、唯一の武器だった

    独自に作ったコンテンツ
    誰にもできないシステム
    僕は、それを仲間に共有していた
    見返りを信じて

    だが
    電話の内容は、裏切りだった

    僕のノウハウだけが
    “都合よく”抜き取られていた

    “またやり直せばいい”
    そう思い込もうとしても
    胸の奥は、ぽっかりと穴があいたままだった

    帰り道、再び一人で歩き出す
    仲間たちは、タクシーに乗って帰っていった

    そのときだった

    ──ドォン……

    地の底から、獣のような咆哮が響いた
    振り返ると、空が赤く染まっていた

    富士山が、爆発していた

    地響きとともに大地が揺れ
    建物が崩れ、空が灰に飲まれていく

    太陽は見えなくなり
    町はパニックに包まれた

    溶岩が迫ってくる
    人の叫びと、轟音と、炎のにおいが混ざり合う

    タクシーの屋根が、赤い津波に呑まれていくのが見えた

    僕は無我夢中で走った
    あの橋へ──あの道へ

    だが、橋はもう崩れていた
    戻る場所も、進む場所も、ない

    終わった──そう思ったそのとき
    目に飛び込んできたのは、あの店だった

    そして、店の前に
    あの少女が、まだ立っていた

    「見えてるんだろ?」
    「早く入りな」

    声は小さかったのに
    なぜか、すべての音をかき消すようだった

    僕は扉を開けた

    一瞬、視界が真っ暗になり──
    次の瞬間、風の音と、草の匂いがした

    目の前にあったのは
    何事もなかったように、穏やかな風景だった

    空は澄み、富士の稜線が静かに浮かんでいた

    どこからか、少女の声が聞こえた

    「一人で歩いてきたから、見えたのさ」
    「唯一無二ってやつだね」

    そのとき、金色の尾を翻しながら
    一匹の狐が、遠くを駆け抜けていった

    僕は気づいた

    また創ればいい
    また信じればいい

    さらけ出して
    奪われても
    それでも、歩き続ければ

    誰もやっていないことを
    誰よりも深くやり続ければ

    僕にしかなれないものになれる

    それが──
    唯一無二

    そして今も、
    僕は歩いている
    あの日の続きを
    富士の頂の、そのさらに先を目指して