写メ投稿
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2025-07-21
太陽とエルフと、手首の風船
太陽に向かって
ただ、自転車をこいでいた。焼けるような空気のなか、
風だけが、まともだった。本屋に着く。
手にしたのは、
最強なのに静かな、エルフの物語。永く生きる彼らは
別れをいくつも越えて、
それでも静かに、前へと進む。
まるで、何かを知っているように。彩りのある料理を
ひとり、静かに味わう午後。
そのあたたかさが
胸の奥をぽつりと染めていく。思い出す。
1日で消える、ドーナツのような甘い記憶。
暑さの中で並んで、
渡したら、笑ってくれた。1日で消えてしまう甘さも、
遠くまで届く笑顔も、
風に乗れば
どこかへ行ける気がした。見上げると、
手首からふわりと風にほどけて、
風船が太陽に向かって舞い上がる。何も言わず、
まっすぐに、遠くへ。きっと、届く。
そんな気がした。