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  • 2025-07-14

    ヘミングウェイと黄金の鍵と、自由の女神

    かつてアメリカの文豪ヘミングウェイは、
    「パンドラの箱の奥には莫大な宝が眠っている」と語った。
    だがその箱を開けるには──
    あらゆる恐怖と、孤独と、絶望と、
    そして何より「現実」と向き合わねばならない。

     

    僕はその箱に、手を伸ばせずにいた。
    ただ、誰かの作った地図の上を
    正確に歩くことだけに集中していた。

    現場の作業員を、いかに長く働かせられるか。
    労基に触れないギリギリのラインを探し、
    関数を組み、数字を整え、
    フードコートの片隅で夜を明かしながら、
    “昇進のための資料”を作り続けていた。

    ──それが僕にとっての「成功への鍵」だった。
    でも、あの時はまだ知らなかった。
    それが地獄の扉を開く呪われた鍵になることを。

    ある日、上司に呼び出された。
    「君の肩書きは、今日で解除だ」
    静かに、無感情に告げられたその言葉は、
    まるで断頭台の斧のように僕を叩き落とした。

     

    ──そう。
    僕は、自分が作った資料で、
    自分を処刑したのだった。

    その瞬間、
    彼は“上司”ではなくなった。
    欲望を食い散らかす、“仮面のハイエナ”になった。

    僕は知った。
    この世界には、
    “自由のふりをした牢獄”がある。
    そこから抜け出すには、
    ヘミングウェイの言った“宝の地図”を手に入れなければならない。

     

    そして僕は、ついに決意する。
    あのパンドラの箱を開けるときが来たのだ──。

     

    警備室から盗んだ黄金の鍵と、
    閃光手榴弾、そしてマグナムを手に、
    僕は最上階の宝物庫へと走った。
    だがそこに立ちふさがっていたのは、
    あの仮面のハイエナだった。
    マシンガンを構え、僕を見下ろすその顔に、
    もう“人間”の気配はなかった。

    僕は手を上げるふりをして、
    ポケットの中の閃光手榴弾を転がす。
    閃光が弾けた瞬間、
    僕はマグナムを構え、
    ハイエナの眉間を撃ち抜いた。

    「あの世で自由の女神にキスでもしてな」

    そう言い残し、僕は箱を奪った。
    パンドラの箱の蓋が開くと、
    中からはあらゆる恐怖と呪いが飛び出してきた。
    でもその底には──
    “希望の光”が、確かに残っていた。

     

    あれから僕は、
    その希望の光を帆に受けて、
    広大な海に旅立った。

    地図を捨て、自分だけの地図を描きながら──
    自由を求める仲間たちと出会い、
    ときに孤独と闘い、
    ときに笑いながら。

    そして今日もまた、
    空に掲げた希望のコンパスを頼りに、
    まだ見ぬ世界へと、航路を引いている。

    自由の物語は──まだ、旅の途中だ。