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  • 2025-07-07

    豚と呪いと、自由の設計図

    僕は、人生の分岐点に立つとき
    いつも “かっこいい” と思う方を選ぶ。

     

    かつて、会社で僕に勝てる者はいなかった。
    知識、スピード、調整力。
    どれをとっても、誰よりも上手くやれる自信があった。

    でも僕は、自分に“呪い”をかけた。
    「はい」と笑って、
    無理なことも「できます」と言って、
    顧客の嘘にも、上司の無茶にも、全部応える。

    ──そうやって
    僕の姿は、豚になった。

     

    ある日、部下が大きなトラブルを起こした。
    会社は騒然となり、
    誰もが“責任を押しつけ合うゲーム”を始めた。

    僕もそうだった。
    資料を整え、誰よりも早く顧客に頭を下げて、
    「僕は無実です」と、形だけの正義を装う。

     

    でも──
    そのとき、僕の愛機“ダンピール”が
    不調のまま空に舞い上がった。

    後ろから海賊の不意打ちを食らって、
    僕は機体ごと、海へ墜落した。

     

    海の底で僕は出会った。
    世間の波に染まっていない、純粋な少女に。

    「今のままじゃ、勝てないよ。
    でも私が手伝うから──
    自由に飛べるように、設計し直そう。」

    彼女の瞳には、
    僕が忘れていた “空” が映っていた。

     

    決戦の日。
    ビルの最上階。
    会議室には、偉そうな“敵”が並んでいた。

    僕は、改造した愛機に乗って
    空の決闘場へ飛び立った。

     

    空中戦は拮抗していた。
    背後を奪い合う消耗戦。
    気がつけば、燃料が尽きて
    二機とも、海へ落ちた。

     

    そこからは、拳の勝負だった。
    殴って、殴られて、
    痛みも、言葉も超えて、ただ──本音をぶつけ合った。

    倒れかけたそのとき、
    クロスカウンターが決まって
    僕はようやく、
    “言い訳の仮面”を打ち砕いた。

     

    会議室で、
    資料よりも感情を前に出して話した。

    すると──
    偉い人が立ち上がって言った。

    「わかった。今回は、こちらで持ちます」

     

    彼女がそっと寄ってきて
    僕のほっぺにキスをした。

    その瞬間、
    豚の呪いは解けていた。

     

    かっこいいと思う方に進めば、
    自分を偽る必要なんてない。

    自由は、
    “好きに飛んでいい”という設計図から始まる。

     

    ──今の僕は、
    海を越え、風を抜けて、
    もう一度この空を、自由に飛んでいる。