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  • 2025-06-13

    重力鉱石とマンホールと、宇宙船インディペンデンス

    僕はいくつものビルを
    “開拓”する仕事をしていた。

    休みはなかった。
    重力が強く設定された星の上を歩くみたいに
    身体が重くて、
    その日は特に、何もかもが沈んでいた。

    ビルの地下。
    誰もいない場所で座り込んでいたら、
    マンホールから音がした。

    「助けて」

    そう聞こえた気がした。

    異世界とつながってるんじゃないか。
    そんな空想が、ふっと浮かぶ。

    でも現実は、
    これから“会議”という名の戦場が待っていた。

    崖を転がるように
    僕はそこへ向かった。

    会議室では
    理不尽な攻撃が飛んでくる。

    静かに思った。

    ちゃんと従っているのに、
    真面目にやっているのに、
    どうしてこんなにも、心は沈んでいくんだろう。

    そのときだった。
    また、マンホールから声がする。

    「飛び立つには、反発することも必要よ」

    はっとした。

    僕はずっと、
    合わせることだけを選んでいた。
    空気に、常識に、会社に。

    心の奥に埋め込まれた
    ふたつに組み合わさった重力鉱石の接合部を
    そっと、自分の方向にずらしてみた。

    その瞬間、身体の中で何かが静かに浮いた。

    会議に戻る。
    いつもなら、顧客に合わせる。
    でもその日、
    僕は静かに、反発した。

    早打ちのレーザー銃のように
    反応が止まったあの空気を、
    今でも覚えている。

    そのあと、
    気がつけば、知らない街にいた。

    マンホールからの声は、もう聞こえない。

    でも今、僕は
    宇宙船“インディペンデンス”に乗って、
    帆で風を受けながら、
    果てしない空を自由に飛び回っている。