写メ投稿
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2025-05-19
春と風と、シンドローム
出会いは、まだ自分を模索していた季節だった。
彼女は軽やかで、真っすぐで、
それでいてどこか、
触れたらほどけてしまいそうな儚さをまとっていた。
年齢も、立場も、意味を持たなくなるほど、
“自由でありたい”という感覚だけが
静かに共鳴していた。
ふたりで交わした食事の時間は、
目的ではなく、余白だった。
グラスを傾けるたび、
彼女の喉が、かすかに揺れていたのを覚えている。
その仕草ひとつで、空気が甘くなる夜もあった。
やがて彼女は、
眩しいほどのスピードで駆け抜け、
その光の先に、名前のつかない揺らぎを抱えはじめた。
理由のわからない揺らぎが、
彼女を遠くへ運んだ。
それはきっと、心の奥に芽生えた“シンドローム”。
説明も整理もできない、
でも確かに存在する、静かな発作のようなものだった。
香りだけを残して、
彼女は、風のように去っていった。
季節がめぐり、忘れかけた頃――
ふいに届いた「誕生日おめでとう」の短い言葉。
まるで風が、過去と今をつなぎに来たようだった。
元気でやっているらしい。
きっと今も、自分だけの熱を纏いながら、生きている。
もう交わることのないふたつの道。
でもそれぞれが、それぞれの光を抱いて、
ただ、進んでいる。
名前のない衝動が、
心にそっと火を灯すとき――
人は風になる。