写メ投稿
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2025-05-16
船と音楽と、時空の狭間
出会いは、
海を滑る船の上だった。
遠くから聴こえてくる音のうねりに誘われて、
夜風とともに、
彼女の世界へと吸い込まれていった。
静けさを宿した眼差しに、
なぜか心がほどけていく。
飾らないのに、
どこか、肌の内側まで届くような——
そんな余韻を残す人だった。
流れるような旋律が、
しなやかに夜を撫でていく。
彼女は音に寄り添いながら、
誰よりも自由に生きていた。
その指先が、
その視線が、
空気をなぞるたび、
僕の深いところが、静かにざわめいた。
触れたわけじゃないのに、
ふいに火照る瞬間があった。
やがて、
彼女の夜に、何度も誘われるようになっていた。
音に揺れ、
夜に溶ける。
彼女は、
静かな日々の中でも、
音という名の自由と繋がっていた。
今日もきっと、
彼女はどこかで鳴らしている。
誰にも縛られず、
誰かの奥に火を灯すように——
あの、自由という音楽を。
そして僕は、
あの夜とあの船と、
彼女の残した音の揺らぎを、
時空の狭間で、今もどこかで探している。